(1)どんな教材を使えばよいのか?

 まず、このようなタイプの勉強法は日本ではまだまだ普及していないので、日本語の教材がありません(単なる症例呈示の本はあるが、問題解決型ではない)。そのため、洋書の教材を使わざるを得ないのですが、このタイプのテキストは数冊あります。僕らはそれぞれに目を通したことがありますが、臨床を学ぼうとする人が一歩一歩読み進めていくのに最適なものを考えた結果、次の本をお薦めします。

  1996年に出版されたばかりの、米国Mosby社出版の「Diagnostic strategies for Internal Medicine」です。副題は「ACase-Based Approach with step-by-step algorithms to guide decision making」です。僕らは通称「モスビー:Mosby」と呼んでいます。題名の通り、内科の病気を実際の症例(過去に実際にあった診療のデータ)を通じて理解していこうというのがこの本の目的です。そして、診断・治療の過程では、アルゴリズム(いわゆる樹形図で、AならXへ、BならYへ、と枝分かれしていく構造)が示されており、診断・治療の道筋を一歩一歩たどっていくことができ、一つの特徴となっています。カバーしている領域は一般内科、アレルギー・免疫病、心臓病、救急、内分泌、消化器、血液病、感染症、腎臓病、神経疾患、呼吸器、関節疾患、癌と内科全般に渡っています。それぞれに、いくつか(5〜13例)症例が含まれており、各分野での一般的な疾患をカバーしています。症例は合計で108提示されています(付録:「Diagnostic Strategies for lnternal Medicine」の症例一覧表)。
 一つの症例に対して、まず患者に関する全般的な説明があり、「Question1」から始まる一連の質問とそれに対するコメントが述べられています。この問題を順々に解くにつれて患者に関するデータが増え、診断も進んでいきます。そして、患者の症状と検査結果に基づいて診断をした後、適切な治療へと話は進みます。病気に対する疫学的なデータも豊富なため、納得した上で治療を選択することができます。そして、最後に「Case Follow-Up」で治療後の患者さんの容態の変化などの報告があって、終わりです。
 この本の問題点としては、質問に対して的確にコメントしていないことがよくある点、アルゴリズムが必ずしも症例と一致していない点、日本の医療と必ずしも一致していない点などが挙げられますが、臨床を今から学ぼうとする学生としては、病気に対する基本的な理解を深めればいいので、十分我慢できることだと考えます。

 僕らはこの本と出会うことによって、先に述べたような勉強を始めることができたわけで、まずこの本を手にとって内容をちらちら見てみることをお薦めします。英語だし、分厚いし、字ばかりだし、第一印象は良くないかもしれません。けれども、そのうわべにごまかされないで下さい。読めば読むほど味の出てくる本なのです。

 この本は、南部生協で取り扱っていますので、すぐにでも手に入ります。価格は1万円近くしますが、それだけ払う価値は十分ある内容だと考えます。

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