医学を学ぶに当たってどのような勉強をするかは、その人がどのような医師を目指すかで自ずから決まっていくはずです。この冊子では、当然、・で述べたような医師を目指す上での勉強法を考えていきます。そのための勉強法には大きく二つの軸があります。一つの軸は「患者とのコミュニケーション技法の習得」、もう一つは「臨床現場で使える実践的な知識・考え方の習得」です。この二つを効率よく学ぶためには、アメリカのように学生時代から病院などの臨床現場に入って医療スタッフの一員として患者さんから学ぶというやり方がベストでしょう。でも今の日本の医学教育では無理です(その疑似体験としてのポリクリはありますが、単なる見学の場でしかありません)。では、どうすればいいのでしょう。
(1)患者とのコミュニケーション技法の習得この学習は従来の医学教育ではほとんど考慮されていませんでした。臨床実習の中での数少ない患者さんとのふれあいが唯一の機会でしたが、やはり限界があります。教官からの指導があるとしても、「問診の中でどのようなことを聞くべきか」という点に限られています。医療内容や患者の意識の変化が進みつつある今、患者からしっかりと話を聞き、信頼関係を構築し、自分の治療に積極的に参加してもらわなければならないようになってきています。ここで提案する「コミュニケーション技法」とは、こうしたことを目標として、本来医師と患者の間にあるギャップを少しでも埋めようと、患者との面接の中で用いる具体的な会話技術のことです。具体的には、「傾聴」「共感」「感情への対応」という三つの基本があり、<解釈><明確化><まとめ>などの技法が含まれます。この勉強を実際どのようにして行えばよいのかというのは、難しい問題です。僕らは「ささえあい医療人権センターCOML」(連絡先:06-314-1652)の提供して下さった「SP(模擬患者)セミナー」に参加し、<奈良医大の藤崎先生のレクチャー>を受け、実際にSP相手に面接を行いました。それまでは、「コミュニケーション」に対してそれほど難しくないのではと思っていたのですが、実際SP相手に面接をしてみると、患者さんときちんとコミュニケーションを取ることがいかに難しいかを実感することができました。このレクチャーの中では、客観的な評価を受けることができるので、自分の自己満足に終わることはあり得ません。今後も意識して実践練習を繰り返さなければと参加者全員が感じたことが収穫でした。 僕らは、「(3)実際の勉強の姿、そして最後に」で述べる「SP・SD形式の勉強会」の中に「コミュニケーション技法」の勉強を取り入れて、これまで半年間続けてきました。本当のSPの方のような演技はかなり難しく不十分なところも多々見られますが、最初の頃よりはかなり自然に上記の三つの基本事項を実行できるようになってきたと思っています。そして、病院での臨床実習で患者さんからお話を聞くときにも、このようなコミュニケーション技法によって、患者さんがますます多くの情報を提供して下さる現実を体験してきて、その効果の大きさを強く感じています。 なお、「コミュニケーション技法」にはテキストもありますので、この目録の該当するテキスト紹介を読んで下さい(医学部基本図書目録内「臨床医学一般」)。 次に、患者とのコミュニケーションの背景として、患者の生活や医療現場を早期に知っておくことは極めて有効だと考えます。 具体的には、病院見学(特に、在宅医療など)やボランティア活動、医療関係サークルでの活動などです。病院見学については、医学部同窓会の斡旋などで、多くの病院の見学が上級生はもちろん、下級生にも開放されています。あまり知られていないことですが、是非このような機会を利用して、積極的に医療現場を見てみるのはどうでしょうか?僕らの経験からも、大きな刺激を受けることは間違いないです。夏休み前に張り出されるビラに注目しておいて下さい。 |