(2)臨床現場で使える実践的な知識・考え方の習得
  〜 ケーススタディ

 僕らは「臨床現場で使える実践的な知識・考え方の習得」のために、次のようなことを考えました。

 医学の中でも「内科」は土台だと言えます。内科ではもはや扱えない難しい病気(ガンなど)や迅速な効果が得られる病気(痔、つまり膿みなど)をメスの手を借りて、迅速かつ効果的に処置するのが「外科」です。今の医学では、この「内科」と「外科」が循環器・呼吸器・神経系などへと細かく分かれており、その全てを一人の医者がカバーするのはほぼ不可能だと言えます。

 僕ら医学生はこの現実の中で何を勉強すればいいのでしょうか?僕らはまず土台と言える「内科」の病気を、詳細にとらわれず、系統的に理解することがベストではないかと考えました。その後、どのような道へ進むとしても、土台さえしっかりと作っておけば、そこからの発展は容易だと考えたからです。また、専門化が進んでいく現在の医療の中で、身体全般をしっかり見れる医者こそが今必要とされていると思います。

 そして、僕らは「問題解決型の症例勉強」というやり方を見つけました。これは、最近アメリカの医学部では基礎医学修得のための標準的な医学教育となっているものです。僕らはこの勉強法を臨床医学修得のために実施しました。この勉強法は、「62歳の女性が頭痛を訴えて来院した。症状は …。」といった感じのありふれた一つの症例を、「なぜ来院したのか?」「この症状は、どのようにして起きたのか?」「この人の診断はどのようにしてつければよいのか?」「治療としてはどのようなものが考えられるか?」というように、いくつかの切り口(=問題)から考えていく(=解決する)ことによって、医療に関する実践的知識を学んでいくという発想です。この中で、様々な病気の基礎知識を学びますし、診断のプロセス・治療のプロセスも考えることになります。時には、基礎医学にまで戻って勉強する必要もあるはずです。まさに、講義のような知識の一方通行伝授型の勉強法の対極にあるものだと言えます。この勉強法の利点をまとめてみますと、

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  • 「症状から鑑別診断、そして治療」という流れの様々なパターン(胸痛・腹痛・めまい・呼吸困難…etc)を学ぶことができること。
  • 様々な疾患について、疑問に目をつぶってでもとにかく覚えていくという方法と違って、その病態生理からときほぐしてじっくり時間をかけて考えることができること。
  • 毎回新たなタイプの患者さんの症例を検討していくスタイルのため、新米医師のような新鮮な気持ちで飽きることなく続けることができること。
  • 「まず覚える」ではなく「まず考える」という習慣ができること。
  • 与えられる勉強ではなく自らつかみ取っていく勉強なので楽しいこと。
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などが、僕らの経験から挙げられます。

 しかし、このようなタイプの勉強法は日本ではまだまだ普及していないので、日本語の教材がありません(単なる症例呈示の本はあるが、問題解決型ではない)。そのため、洋書の教材を使わざるを得ないのですが、このタイプのテキストは何冊かあります。 その何冊かについては、この図書目録の中で紹介していますので、ぜひ読んでみて下さい(医学部基本図書目録内「ケーススタディ」)。そして、南部生協でぜひ手にとって、その目で評価して下さい。多くは臨床医学を学ぶための本ですが、中には、基礎医学(解剖など)を学ぶためのテキストもあるので、2・3回生の方もチャレンジできます。

 なお、テキストの中でも Diagnostic Strategies for Internal Medicine (Mosby Inc.) を使った勉強会で、僕らは臨床医学を勉強してきました。一年間を通じて108の症例から学んだものは実に大きかったと思っています。このテキストについては、僕らが作成した「全症例の復習問題集」と「詳しい使い方」を掲載した冊子が、近日医学書院から発売される予定ですので、興味のある方はぜひご覧下さい 。
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